囚われの令嬢

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囚われの令嬢

乱暴に石の床に叩きつけられ、 萌黄色の長い髪が床に広がる。 私は衛兵を睨みつけた。 「何だよその目は。罪人のくせに」 衛兵が殴りかかってくる。 そう思ったけどもう1人の兵士が止めた。 「やめとけ。曲がりなりにも伯爵令嬢だぞ。 …お前の処分が決まるまでここで暮らしてもらう。 悪女、アルメリア様」 意地の悪い笑みを見せ、私を覗き込む。 衛兵達は笑いながら立ち去っていった。 どうして。 私は悪女なんかじゃないのに。 なぜ、みんな信じてくれないの? 私が何かしたの? 水の中にいるかのように息が苦しい。 私はこうして沈んでいくこと しかできないのだろうか。 もう、疲れた。 人を信じることが怖い。 絶望の涙が次から次へと流れていく。 私が何を言ったって信じてもらえない。 聞き入れてもらえない。 殿下と幸せになる未来すら潰えてしまった。 昏い水底で私は世界を拒否するように ()を閉ざした。 「諦めないでください、アルメリア様!」 目を開けるとよく知る顔がそこにあった。 「フレッド……」 鉄格子から覗く輝くような金髪に、青い瞳の彼は 私の幼馴染であり、騎士見習いのフレッドだった。 彼は真剣に私を見つめている。 「俺が、必ずアルメリア様を 助け出して見せますから!」 フレッドは太陽のように輝いている。 こんな私が近づくのも憚られるくらい。 「フレッド、もういいの。 私はアレイス殿下の恋人に毒を盛った。 きっと処刑されるわ」 自嘲気味に笑うとフレッドは顔をグシャリと歪めた。 「あなたがそんなこと するはずないじゃないですかっ!! アルメリア様は、悪女なんかじゃありません! むしろ聖女です。病に伏した母と妹を 救ってくださいました。 この恩は必ず返さなければならない!!」 「フレッド……」 「俺は、アルメリア様を信じています!」 その瞬間フレッドがくれた優しさの光が 私の胸にスッと差し込んだ。 「……っ私を信じてくれたあなたを…… 信じないわけにはいかないわね」 ふわりと微笑むとフレッドは 嬉しそうに私を見つめた。 「ありがとう。フレッド」 あと1回だけ、人を信じてみよう。
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