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騎士とお姫様の結末
翌日、私は伯爵邸にて
ティータイムを楽しんでいた。
色とりどりの花々が咲き乱れる中庭で
次女が用意したマドレーヌを口にする。
「うん、美味しいわ!
ティアの作ったマドレーヌは格別ね!!」
「ありがとうございます、お嬢様」
ティアは嬉しそうに微笑み、
言葉を口にするをためらっているかのように
瞳を伏せた。
「どうしたの?」
「いえっ、ただ……お嬢様の雰囲気が変わられたな
と思いまして……」
「ふふっ、婚約破棄されてから
新しい自分を見つけたのよ。驚かせてしまって
ごめんなさいね」
「お嬢様が謝る必要はございません!
わたし、嬉しくって。
お嬢様はおとなしい性格でしたから
自分の意見が言えていないのではないかと
心配していたのです」
ティア……そんなことを考えてくれていたのね。
私はティアをギュッと抱きしめた。
「ありがとう、ティア。
私、婚約破棄されて良かったかも」
「お嬢様っ!そんなこと仰らないでくださいっ!」
「ごめんごめん」
慌てて笑みを浮かべると聞き慣れた声がした。
「アルメリアお嬢様、フレッドが戻りました」
フレッド、という言葉に胸の高鳴りを覚える。
これは一体どうしたことかしら。
自分の感情に戸惑いながらも
振り返るとフレッドが立っていた。
その顔には嬉しそうな微笑みが浮かんでいる。
「フレッド」
私は立ち上がり、フレッドの正面に立った。
「私を助けてくれてありがとう」
にっこり微笑むとフレッドは照れ臭そうに
頭を掻いた。
「好きな子が苦しんでるときに
助けないなんて男じゃないですよ」
「ふふふ……って、え!?」
好きな子!?
「実は俺、
ずっと前からアルメリア様のことが
好きだったんです。
アルメリア様、俺を信じてくれて
ありがとうございます。
だから我儘かもしれないけど今度は」
フレッドが跪きわたしの手を握る。
フレッドのいつもと違う様子に
心臓の鼓動が早まった。
「俺のことを好きになってくれませんか?」
嬉しい、と思ってしまう自分に
わたしはあの時からフレッドに
恋をしていたのだと気づいた。
「私、あと1回だけ、人を愛してもいい?」
「もちろんですよ。あと1回だなんて言わず
いつまでも俺を愛してください。」
彼の優しい笑顔に心を縛っていた
1本の紐が解かれた。
「私も、あなたのことが好き」
フレッドは平民で私は貴族令嬢。
これから様々な困難が私達を
待ち構えているだろうけれど
フレッドと一緒なら乗り越えられる。
私は今までの人生で1番の笑顔を見せたのだった。
(終わり)
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