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「初めましてー。Ridのボーカル、パトリックです。リックって呼んで。蓮君、マジ綺麗でビックリしたわ」
ブロンド髪に色素の薄い瞳。見た目は完璧に欧米系の外国人だけれど、日本語は流暢だ。メンバープロフィールには、日本とアメリカのダブルと書いてあったことを思い出す。
「マジ。雑誌とかより実物がヤバいってヤベェな」
リックの隣の銀髪がヤバいを連呼し、蓮を眺める。口と眉に開いたピアスを動かしながら、「ギターの透矢。よろしく」と笑った。
金、銀ときて、次は青だった。
「Ridドラムの将暉です。よろしく。一応、名ばかりのリーダーやってます」
青色短髪の男はメンバーの中で一番大柄で、首に大きな花のようなタトゥーが入っていた。けれど、笑うと目尻に皺ができて、親しみやすい雰囲気がある。
テンポよく続いた自己紹介が途切れた。
蓮は一番左端に座る男に目をやる。途端、びくりと肩を揺らしてしまった。
最後のメンバーは、まるで目力で蓮を殺そうとしているかのように、鋭い視線をこちらに向けていた。
サイドを刈り上げた少し長めの黒髪を、後ろで一つに結んでいる。綺麗な二重の瞳に、高い鼻梁、スッキリと男らしい顎のライン。整った顔立ちだけれど、両耳には大量のピアスが光り、Tシャツから覗く筋肉質な腕は、三百六十度タトゥーで埋まっている。髪色以外、一番派手……というか、怖い。
男は挨拶する気がないのか、ただじっと蓮を睨んでいる。目が合うと、苦々しい顔で視線を逸らされた。
――は?
イラッとする。蓮自身も愛想がいいとは言えないが、挨拶くらいは普通にする。初対面だし、この男に何かした覚えもない。
「おい、大和。挨拶」
将暉が促すと、大和と呼ばれた男は目を逸らしたまま、「……大和です」と名前だけボソリと告げた。舌打ちでもしそうな勢いだ。
――なんだコイツ。
口元が引きつりそうになるけれど、気にしないように努める。変に空気を悪くしてもいいことなんかない。
「それじゃ、自己紹介も終わったみたいだし。早速今回のMVのコンセプトと、流れを確認していこうか」
ディレクターが仕切り直すように手を叩き、テーブルに資料を広げた。
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