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「じゃあ、挑戦してみましょうか」
楽しそうに言う大和に、背中を押された気持ちになって頷いた。
二人で屋台へ向かうと、射的の店員がにこやかに迎えてくれる。
店員に説明を受けて渡された銃は、予想以上に重くて少し驚いた。手首にぐっと力を入れないと、銃身がすぐ下がってしまう。
「肩にしっかり当てた方が、狙いやすいですよ」
大和はそうアドバイスしながら、そそくさとスマホを取り出し、蓮が銃を構える姿を撮り始めた。
アドバイス通り、肩に銃を当てて、目の前の景品を狙う。けれど銃口が小さく揺れて、狙いを定めるのが思った以上に難しい。
呼吸を整え、タイミングを図って引き金を引くが、弾は景品にかすりもしなかった。遠くで乾いた音が響くだけだ。
「難しいな」
隣にいる大和を見ると、まだ撮影中だった。
「なにも取れないとこなんて、撮っても意味ないでしょ」
「いえ。素晴らしいです」
「……なにが?あ、あと一回しかできない」
いつの間にか、銃コルクは残り一発になっていた。
「なんか欲しいやつあるなら、取りましょうか?」
スマホを浴衣の帯奥にしまい、大和が言う。
「え、取れるの?」
「はい、多分。どれですか?」
蓮は大和に銃を渡し、星の形をしたぬいぐるみを指さした。
「あれ。星のぬいぐるみ」
「あれ……なんです?なんかのキャラ?」
「わかんない。でもベース持ってる」
「あ、ほんとだ。弦が四本だ」
星形のぬいぐるみはベースを抱えながら、なんとも言えないご機嫌な顔をしている。
「じゃあ、あいつ取りますね」
大和は銃を軽々と持ち、肩に当てて構えた。まるでその重さを感じていないみたいに、片手で安定させている。
ぬいぐるみを見据え、ほんの一瞬だけ銃口を動かした。呼吸を整えることもなく、軽く引き金を引く。
乾いた音が響き、狙っていたぬいぐるみが見事に倒れた。
「おめでとうございまーす!」
カランカランと店員が鐘を鳴らす。大和は静かに銃を下ろし、店員からぬいぐるみを受け取った。
「……お前、すごいね」
簡単に有言実行してみせた男に、感嘆の言葉が漏れる。
「取れてよかったです。はい、どうぞ」
「ありがとう」
蓮はふわふわとした星形のぬいぐるみに視線を落とし、あれと気づく。
「大和、見て。こいつ、腕にハートマークあるよ」
「ほんとだ」
「星とベースとハートって、大和と一緒だね」
一目見て、大和みたいだなと思ったから、このぬいぐるみが欲しくなった。腕のタトゥーまで似ているなんて、すごい偶然。
「大和二号だ。……お前より、こいつの方が可愛いけど」
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