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 病院に到着し、受付で大和の名前を伝えると、「軽い処置は終わって、今は待合室にいます」と告げられた。  ――軽い処置?待合室?  スピードを出したバイクと接触したんだから、てっきり手術や入院という事態になっていると思っていた。  不思議に思いながら待合室に向かう。部屋の前に立ち、一つ呼吸をしてから扉を開けた。  待合室のソファに、大和が座っているのが見えた。腕に大きな絆創膏みたいなテープが貼られている以外は、特に変わった様子は見受けられない。  さらに大和の隣には、学生服の高校生らしき少年が座っていた。二人以外、他の患者の姿はない。 「……大和……」 「――え、え!蓮さん?どうしてここに……」  大和が蓮に気づき、顔を上げた。 「リックから、電話で……お前がバイクに、突っ込まれたって……」  言葉に詰まりながら説明すると、大和は困惑した表情を浮かべる。 「……バイク?いや、俺は――」 「あ、あの、……俺が急に飛び出したんです」  大和を遮って、隣の高校生が小さな声で割り込む。 「俺が悪いんです。急いでて、スピード出しすぎてたから……」  少年はこの世の終わりみたいに顔を青くして、申し訳なさそうに俯いた。大和は少年の肩を優しく叩き、蓮に向き直る。 「俺がぶつかったのは、バイクじゃなくて自転車です」 「……自転車……?」 「はい。この子――高良君っていうんですけど、高良のチャリと事故っちゃって。高良が足を痛めたっぽいので、その付き添いで、俺も病院に」  大和が慌てて、「待ち合わせ遅れますって連絡、今さっきしたんですけど、遅かったですよね」と、なんだか見当違いな謝罪をする。 「……怪我は?……大丈夫なの?」 「俺は全然。手当もいらないくらいの擦り傷です」  ほら、と絆創膏が貼られた腕をかざした。 「でも……リックが電話で……将暉も……」  事態が飲み込めない蓮を見て、大和が何かに気づいたように、眉を顰める。 「あー……多分、あいつら大袈裟に伝えたんだと思います……高良とぶつかった時、メンバー全員一緒だったんで」  ――一緒にいた?自転車とぶつかって、擦りむいただけの大和を知ってたのに、あんな電話をしてきたってことか? 「……なんか、すみません」  謝る大和に、身体の芯から力が抜けた。  蓮を揶揄ったんであろうリックや将暉に一言いってやりたい気持ちと、心の底からの安堵感が同時に湧き上がる。 「……無事なら、いいんだけど……」  複雑な気持ちのまま、大和の隣に座る少年に目をやった。大和にも引けを取らない大柄な身体を丸め、項垂れている。 「彼の、……高良くんのご両親には、連絡ついたの?」 「はい。ここに迎えに来てくれるみたいです」  な?と大和が声をかけると、高良はさらに身体を縮こませて頷く。 「ほんとに、俺、ごめんなさい……大和さんに、怪我なんて……Ridの横アリ、もうちょっとなのに」  高良はRidも大和のことも知っているらしい。
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