1・クモノイト③

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1・クモノイト③

結局、俺がせっかく張った蜘蛛の巣は解体されてしまい、釈迦の手によって、地獄へ通じる穴から下の方へ垂らされたのだった。 「うっふふ。うっふふ」 なんて言いながら釈迦は糸を垂らしてるけど、思うように糸は釈迦の手を離れていかない。そりゃそうだ、これは蜘蛛の糸。獲物を捕捉するためのべとつく液が付着してる。 「べとつくうう」 うるせえなあ。 俺は釈迦の掌に乗って糸を送り出す手伝いをしてやった。 やがて地獄の底に辿り着く蜘蛛の糸。怖い顔の閻魔がこっちを見上げてる。 「閻魔あ、よろしくう。カンダタ、助けてあげてえ」 釈迦が叫ぶと、しょうがねえなあ、なんて顔をして閻魔はカンダタを呼んだ。 ああ、あいつだあいつ。カンダタ。 ああ、この世の不幸をしょい込んだ顔をしてんなあ。こいつは優しい心を持っている。でも、現世で、殺人、強盗と罪を犯したらしい。人間世界をうまく生きられなかったのだ。こいつは不器用な奴。多分、計画的に人を殺す戦争犯罪の方が数百倍も罪なんだけどなと、俺は思う。 閻魔に言われ、カンダタは蜘蛛の糸を上り始めた。 「釈迦さんよ。引っ張り上げてやんないんですか?」 「あ。うん」 「なぜ?上るの大変そうですけど」 「だって、これを見るのが楽しみでやってるのに」 こいつ。
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