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ウサギとカメが、最高の親友になる話。
僕と話す時、彼はいつもイライラしているような気がする。
それも無理ないことかもしれない。何でもさっさと片付けたいタイプの彼と違って、僕は非常にのんびり屋だ。あまりにも性格が違う。
むしろそんなに怒ってばかりいるのに、何故いつも僕に構うのか極めて謎だと感じるほどだ。
「おいカメ、なんでいっつもそんなトロトロ飯食ってんだ、ボケ!」
ぴょんぴょんぴょん、と跳ねながら僕の所へ走ってきたのは、ウサギさん。僕の甲羅をつんつんつついて、呆れたように言った。
「あーあーあーあー……まーた木の実ほとんど残ってねえじゃんかよ!ハトかカラスにみーんな持ってかれてんじゃん。さっさと食わねえからこうなるんだよ!」
「うーん、そうだよねえ。でも、僕ゆっくり食べるのが好きだからさあ」
「ゆっくり食べてるせいでいっぱい食えねえんじゃ、デカくなれねえだろうが。てめえは俺よりずっと寿命長いんだろが、もっと周りに食われねえようにさっさと食うか、食いモン守る努力しやがれ!あーイライラすっぜ!」
「わ」
彼はぽんぽこ怒りながら、僕の目の前にばらばらばら、と持ってきた小さな木の実をバラまく。こいつを食えと言いたいらしい。手間かけさせやがって!なんて言っているが、僕のためにわざわざ持ってきてくれたのだと知っている。
「ありがと、ウサギさん」
僕は相変わらずゆっくりと木の実と草を食べながら、彼に笑顔を向ける。
「ねえ、ウサギさんも一緒に食べようよ。たくさん走り回っておなかすいてるんじゃないの?」
「これはてめえの分だ。俺はもう食ったからいい」
「でも、一緒に食べると、やっぱり美味しいと思うんだよねえ。ほら、家族でご飯を食べるって、素敵なことだって言うじゃない?ウサギさんも子供の頃は家族でごはんを一緒に食べていたんでしょう?僕は、赤ちゃんの時にママと離れ離れになちゃったから、家族でごはんを食べたことないんだよねえ。だから、一緒に食べてくれるとうれしいなあ。そうすればいっぱい食べられると思うんだけどなあ」
「お前なあ……」
彼は大袈裟なため息をつくと、僕の前にどっかり腰を下ろすのだった。
「仕方ねえから今日だけは一緒に食ってやる。でもな、次からは俺が木の実を恵んでやらなくても自分でちゃんと食べ切れるようにしておけよ。つーか、カラスはともかくハトやスズメに負けてんじゃねえ。しばくぞ」
「うーん、しばかれたくはないなあ。ウサギさんのパンチ痛いしー」
昔から、僕達の関係はこんなかんじ。
傍からみると、僕はいっつもウサギさんに叱られてばかりいるように見えるのかもしれない。
でも、僕は彼のことが嫌いではなかった。
いつも真面目で、頑張り屋で、僕と一緒にごはんを食べてくれる彼を友達だと思っていたからだ。
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