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③
結局昨日は足を棒にしただけの1日だった。
ガイシャの働く不動産会社へ赴き田町の上司や同僚、部下それぞれに写真を見てもらったが、パーティを行っていた場所もそこに写っている女性たちも、誰一人見当がつかないようだった。
当然ながら田町の親しい知人や友達の情報もそこでは掴めなかった。
「田町さんって社内では浮いてましたから」
最後の1人、事務員の黒屋さんがそういった。
「会話も事務的なものしかしないですし、帰宅するのもいつも1番最初でした。忘年会や新年会なども参加はするけど、すぐに帰るものだから、いつしか誘わなくなったくらいだし…」
「そんなに浮いてるのに、会社を辞めはしなかったのですね」
「それなりに仕事は出来る人だから周りからパワハラやモラハラを受けるような事もなかったようだし、田町さん自身、1人が気に入ってるというか、気が楽だって言ってましたからね」
泡沢は黒屋さんにご協力のお礼を言い不動産屋を後にした。
不動産屋に行けば何かしらの情報や手掛かりが入ると思っていたが甘かったようだ。当然、チンポもピクリとも反応しなかった。
後は学生時代の交友関係を徹底的に洗い、写真に写っていたあの3人を見つけ出すしか無さそうだ。泡沢はそう思い一旦、署に戻る事にした。
田町の学生時代の交友関係をあたっていたのは同期の木下だった。
その木下はまだ戻っておらず直ぐに情報を得ることが出来なかった。
「警部、木下から連絡ありましたか?」
「ん?泡沢か。いつ戻ってきた?」
「今です」
「で、職場は?」
「何も得られませんでした」
泡沢はいい、不動産屋での話を警部に話して聞かせた。
「なら泡沢、三田と合流しろ」
「今からですか?」
「なんだ?嫌なのか?」
「いえそういう訳じゃありませんが…」
「が?」
「ガイシャの遺留品を確認したいのと、それともう一度、部屋に行ってみたいんです」
「お前ともあろうものが、どうした?」
「見過ごした箇所がないか再確認したいだけです」
再確認といってしまった事に泡沢は少しばかり後悔した。改めて確認するという事はやはり勃起に自信が持てていないとみなされても仕方ないからだ。
「勃起に確信が持てないのか?」
「そうではありません。ですが、私自身、現場に臨場する時、シコっていませんでした。それは私の慢心ですし、油断していたのは確かですから」
「そうだな。ま、なら行ってこい」
「ありがとうございます」
「けど終わったら、直ぐに三田と合流しろ」
「わかりました」泡沢は頭を下げた。
だが期待に及ばす遺留品から勃起を導く事は出来なかった。
それは現場に戻ってみても同じだった。
やはりあの写真の中の3人を何とかして見つけるしかなさそうだ。
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