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「……そ、その剣を手にとってはいけない!!」
それは半甲冑を身に着けた戦士である。
見ると、リーダーの彼だけではなく冒険者パーティ――シーカーズと云ったか――全員が白い火の玉に囲まれ、呻き声をあげていたのだ……
「その剣を持つと死の呪いを受けてしまうぞ……」
呻く戦士のみならず、全員の顔が不気味な――まるで黒いインクでも掛けられたように染まっていたのだ……
「そう、資格なきものが剣に触れれば、あのように呪われた死病に体を冒されてしまうことになるのであーる……」
「……だめだーわしはしんでしまうー」
「知性と知識の神よ……せめて末期のお酒を……」
「あぁ、先祖の霊が迎えに……」
「……なんで、私たちこんなことしてるんだろ」
棒読みのごとく嘆くドワーフ、聖印でなく空瓶を掲げて祈るハーフエルフ、一人真剣な表情を見せる呪術師、どこか投げやりなちびっ子盗賊と、それぞれの姿に疑問を持つ隙を与えないようにするかの如く、木乃伊の干乾びた顔がロウガの視界を塞ぐ。
「さぁ、今こそ……今こそ……」
その圧と見た目の恐怖に負け、ロウガ、いや、彼は……
「お、俺はお前の来世なんかじゃない!
俺は泣く子も黙る〈白き盗賊団〉の頭領ジャックだぞ!!
木乃伊みたいな前世なんて知るもんか!!」
「……そんな盗賊団の名など聞いたことないのであーる」
「う、うるさい!! お前なんか、白い鎧でやっつけて……」
首を傾げる木乃伊にかまわず、腰の剣を引き抜こうとしたロウガ改めジャックであるが……
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