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「……この火の玉……まさかウィル・オー・ウィプス……精霊か!?」
自身を取り巻く火の玉の正体にイトゥワルーが気付いた。
「頭領、これは冒険者共の誑かしじゃ!」
その叫びを聞いた火の玉――リーヴァンの呼び出した精霊――が「ばれた!」と言いたげな顔になってそそくさと召喚者の後ろへと逃げていく。
「……貴様ら、俺たちを騙したのか!?」
事態に気付き、木乃伊から距離を取るジャック並びにイトゥワルーや手下たち……
その姿を見たホゥクンがインクで汚れた顔を布で拭きながら立ち上がる。
「やっと、正体を現したな……」
「さっさと奇襲を掛けてやっつければよいものを、ホゥクンが[正体が気になる]などと言うから、儂らまでこんな茶番をする羽目になったのだ……」
ホゥクンに続き、ボルドも呆れながらハルバードを構え直す。
「まぁ、その正体も大したことなかったですし……」
「ナントカ色の盗賊団なんて名前、結構ありふれているのよ……」
光の精霊ウィル・オー・ウィプスを従えたリーヴェン、弓を構えたアイラも改めて戦闘態勢をとる。
「せめて末期の酒じゃなくて勝利の美酒を味わいたいものねぇ……」
神官の筈であるハミルも肩慣らしにモーニングスターを軽く振り回す。
そしてホゥクンの、
「なら、この戦いの後で祝杯をあげようじゃないか……
あの連中の[おごり]でな……!!」
と告げた言葉を合図に、シーカーズ全員が、呆然となったままの賊めがけて躍りかかった。
「みんな、手筈通りいくぞ!!」
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