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一方、魔術詠唱に必要な[声]と同時に逃げ道までも失ったイトゥワルーは……
――ここからでも無詠唱に切り替えれば……
と、気を静めて心の中で魔術の完成をイメージするものの、自身の行使可能な最大級の呪文故に……
――くっ……纏まらん!!
その戸惑いは大きな隙となった。
「……今です!!」
リーヴェンが瞬時に先祖伝来の杖をかざすと、空いている左手で組まれた印、その指の先に小さな火球が生まれた。
――呪術師も無詠唱術だと……!?
無詠唱に依る術の行使に驚いたわけではない。
リーヴェンの[狙い]に気付いたイトゥワルーは慌てて自身が生み出し育てた火球を消そうとしたが遅かった。
「……それっ!」
詠唱を省くことで瞬時に形作られた小さな火球が飛び込んだのは、イトゥワルーの造りし大火球……
「ぎゃああぁぁぁぁ―――!!」
手元で起きた爆発と同時に御業の効果が切れたのか、爆発音と悲鳴が響き渡る。
リーヴェンが呟く。
「……元より無詠唱による魔術行使は低位の術を瞬時に掛けるための手段ですから……
高度な呪文、しかも複合魔術を無詠唱で唱えるなんて、熟練の魔術師でもないと失敗するのは明らかですよ……」
「……解説ありがとう……」
それだけを言い残し、全身黒焦げとなってイトゥワルーはその場に倒れた……
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