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「ももタイのゆめちゃんと浜田純平が結婚かぁ……なんか、ロスになりそうだ」
「鶴丸先輩、ももいろタイガースが好きなんですか?」
「ああ、もちろん好きに決まってるじゃないか。特に神楽坂ゆめは一番人気だ。そんな中で日本アカデミー賞俳優の浜田純平と結婚って、勝ち組じゃないですか」
「まあ、確かにアイドルとの結婚は男性なら一度は憧れますけど、まさか鶴丸先輩がそういうのに興味があるとは思いませんでした」
「僕、彼女たちが地下アイドルだった頃から日本橋で応援していましたからね。何だか感慨深いっす」
「そ、そうなのね……」
仁美は、鶴丸刑事の趣味について少し引いていた。それが男性の夢だと分かっていても、仁美には理解が追いつかなかったのだ。そして、話を一連の殺人事件へと無理やりシフトさせた。
「それより、あの目潰し魔についての情報は寄せられているんですか?」
「それがね……全くもって脈ナシなんです。一応芦屋や六甲アイランドで聞き込み調査は行っているんですけどね……」
「そうですか。SNSとかはチェックしたんですか? もしかしたら、そういうところに事件解決のヒントが隠れているかもしれないですから」
「それって、例の女性の受け売りですか?」
「まあ、受け売りって言っちゃえばそれまでなんですけどね」
「その女性と、会ってみたいんですよね。名前、何でしたっけ」
「神無月絢奈よ。ちょっと男性っぽい見た目で怖い顔をしているけど、彼女の推理能力は結構買っている部分が多いんですよ」
「なるほど」
「浅井刑事、鶴丸刑事、私語を慎みなさい」
「け、警部! お疲れ様です! 一連の目潰し殺人事件について何か新しい情報は得られたでしょうか?」
「事件発生時のGPS情報を割り出したところ、被疑者の絞り込みを行える事が出来た」
「それは本当ですか!?」
「本当だ」
「被疑者の名前は浜田純平だ」
「えっ」
「だから、被疑者の名前は俳優の浜田純平だ」
林部警部の言葉に、鶴丸刑事はショックを受けた。そして、反論した。
「浜田純平って、今朝アイドルの神楽坂ゆめと入籍発表したところですよね!? 彼が被疑者だと言いたいんですか?」
「残念だが、現時点では彼を指名手配するしかない。他に被疑者がいるとすれば……どうなんだろうか」
「うーん……そんな事言われちゃうとどうしようもありませんね」
「それにしても、どうして浜田純平が被疑者だって分かったんですか?」
「浜田純平は六甲アイランドに住んでいる。それで、第2の事件が発生した時のGPS情報を割り出した結果、現場にいたのが浜田純平という事が分かった。ただそれだけの話だ」
「でも、それだけじゃ彼が被疑者だという確証は持てないですよね」
「ああ、確かにそうだが、第2の事件の被害者のことは覚えているな?」
「確か……鈴木千尋さんですよね。それがどうしたんですか?」
「証拠品として押収した鈴木千尋のスマートフォンからGPS情報のログを見ると、事件発生時刻にある男性と会っていた事が判明した」
「それが、浜田純平だったんですね」
「まあ、そうなるな。ともかく、浜田純平を殺人犯として指名手配する。これはもう兵庫県警の方で決めた話だ」
その日から、浜田純平は幸せの絶頂からどん底へと突き落とされる事になった。しかし、兵庫県警の判断はこれで合っていたのだろうか? 仁美と鶴丸刑事にはそれが分からなかった。
※
目を醒ますと、ほぼ正午だった。スマホのアラームを止めて、僕はポットのお湯を沸かした。ジャンクフードは体に悪いとはいうが、偶に食べると美味しい。ポットのお湯が沸いたことを確認して、僕は醤油味のカップ麺にお湯を注いだ。3分待っている間に、僕はニュースを見た。目潰し事件についての何らかの情報が欲しかったからである。えーっと、アレ? 浜田純平? 彼、今朝入籍発表したばかりだよな。なんで指名手配されてんの? 理解が追いつかない。そんな事を思っていると、浅井刑事から連絡が入っていた。
【絢奈さん、少しお話したい事があります。今から芦屋に向かいますので、またスタバで待っていてくれないでしょうか? 兵庫県警捜査一課 浅井仁美】
そうだよな。刑事さんも困惑してるよな。なんか、この事件も厄介な事になっちゃったな。迷宮入りする前になんとか解決したいけれども、果たして解決するのだろうか。
仕方がないので、僕は浅井刑事の連絡を頼りにスタバへ向かうことにした。
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