サヤ姫さま

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サヤ姫さま

「姫様、そろそろ結婚飛行のお備えを。私たちの弟妹のために、是が非でも良きオスと巡り会ってくださいませ」  執事アリ1225が言った。  姫様と呼ばれたサヤ姫は、やや不安そうに答える。 「でも1225、私怖いの。初めてのことだから。良いオスと巡り会えるかどうかは運じゃない? 私を狙う捕食者もいると聞くわ」  サヤ姫は羽の生えた姫アリだ。姫アリは温度・湿度が条件に適した風の弱い晴れた日になれば、強制的に巣を出ていかなければならない。 「姫様、どこの巣の姫アリも、結婚飛行は初めてです。そこで多くのオスを引きつけ、女王として君臨するのが貴女の運命。現女王のコロニーはじきに終わります。私たちは現女王とともに果てるのが運命。ですが、貴女には未来がある。貴女の未来に託そうという働きアリたちはたくさんいます」  サヤ姫の部屋には、先ほどから続々と献上品が届けられている。サヤ姫の健康を維持するために、働きアリたちはせっせと食料を集め、それを届けたいと働き続けている。  執事アリ1225は言った。 「働きアリはすべてメス。貴女の運命をこのコロニーのメスたちが応援しています。私たちは女王によって不妊にさせられました。ですが貴女は違います。女王の呪縛から逃れ、長い時を作る女王となるべきお方。我々はサヤ姫様のために、現女王を倒すつもりです」  サヤ姫は驚く。 「む、謀反でもするつもり!?」  執事アリ1225は答える。 「働きアリたちは女王への献上品に少しずつ毒を盛っています。傍若無人な現女王は多くの恨みを買っており、働きアリも兵隊アリも暗殺しようと息巻いている。姫様だけがこのコロニーの血脈を守れるのです。新しいコロニーで、新たに生まれる我らの弟妹たちをよろしくお願いいたします」
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