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美央にはなりたくなくて?
「ウソ、みーんな、ウソ、あたしは、美央がうらやましかった」
自分に言い聞かせるようにあたしはつぶやいた。
踊り場に付いている四角い窓から日が差し込んだ。
スポットライトみたいだった。
だとすれば、あたしはなんて喜劇役者なんだろう?
「頭脳明晰、それだけが特技、それしか取り柄が無かった。
だからあたしは見た目も、おもいっきし!真面目な容姿にした。
あのね、この黒縁メガネは伊達メガネなんだよ。
でもさあ、なんでかなあ?あたしは化粧をしても華やげないの。
おかしいでしょ?顔立ちが同じ双子の筈なのに、なんでかダメ。
美央はリップひとつでも春の野辺みたいに美しくなるのに!
あたしは立ち枯れた冬みたいなんだよ!」
みんながざわついた。
そして女性教師が言った。
「厚谷(あつたに)真央さん、美央さんを殺したって言うけど、
美央さんは意識不明でしょ?意識を取り戻せば殺人じゃないわよね?
ううん、たとえ亡くなったとしても証拠は無いわ」
「なにが、言いたいの?」
東大にいけ東大にいけと、あたしに言ってきた教師だった。
「要するに言葉だけでしかない、だけど、あなたの学力は本物よ。
このまま勉強して欲しいのよ。あなたなら絶対に東大にいけるのよ!」
「女に学力なんか関係ない!そっちの先生は言ったわ!」
あたしは立ち上がり、ヒョロヒョロ体型の男性教師を指差した。
あたしの担任教師を。
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