踊り場で踊れない

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「させねーよ。殺そうとしたら、また俺が助ける」 真剣な眼差しで見つめてきた真乃纏に逆上した。 「あーそーですかー、ご立派なことで!あー、うらやましー! いいわねえ、特殊能力とかカッコよくてさ、そんで気さくで、 誰とでも仲良くなれるし、趣味も音楽に映画だっけ? なーんか豊富でさあ?それで、有名大学も狙える学力なのに、 どうしても高円寺(こうえんじ)に住みたいから中野の大学にする。 だっけ?なーんにも苦労なしに生きてきた人間の代表格だよね!」 「妹が自殺してますけど?」 「え?」 状況に飽き始めた生徒が立ち去ろうとしたり、教師たちも持ち場へと 戻ろうとしていたときだった。 「妹、いたんだよ。4つ年下。 だから、一緒に過ごした時間は短いけどね。 イジメを苦にして小学3年で海に飛び込んで死んだ。 俺の目の前で、飛び込んだ。止める間もなく、助けられなかった。 俺は、ずっと悔やんでる。ずっと、いつまでも。 だから、助けられる命は助けたいって思うようになった。 で?この情報が無いと?俺は、なんだっていうんだ? 俺は悲しみを乗り越えてきたって顔してればいいのか? 俺は、傷ついたぶんだけ人に優しくできるって言葉が大嫌いだ」 言い切った。 真乃くんは、自身の否定する言葉のまんま。 『傷ついたぶんだけ人に優しくなれる』そのまんま。 それに自分で気づいてないだけだった......。
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