ワンマン!

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真乃くんの住まいは木造アパートだったけど、独り暮らしタイプでは かなり広くてゆったりしていた。 現在ではあまり無いロフト付きだったので、天井も高い。 とはいえ、CDを置く専用の棚。 CDラックがたくさんあって、部屋の三分の一を占めていて 改めて真乃くんはガチだと実感させられた。 「幽霊ってさあ、気の毒と同時に便利だよなあ。 どこ行っても無料じゃん? 俺はライヴ代と、物販やCDを買うためにバイトしてるよ。 このアパートも古いけど安さを優先した。 ワンルームで探すとさあ、洗濯機が外にあるとか、置いてなくてさ、 近くにコインランドリーあるとか、それはちょっと避けた。 洗濯は室内でやりたいよ。外とか冬は寒いじゃん?」 イタイところを突かれてしまい、僕は半笑いになった。 「まあ、大好きだったビールは飲めないけどね。そこは残念」 缶ビールを片手に持って、真乃が笑った。 「あ、なんだか勝ちの気分!まあそれはともかく、 偵察隊としては頼もしいよ。 どこでも行ったり来たりできるし。あ、女の子には」 「わかってるよ。僕はモラルのある幽霊です!」 「ガチ推しは誰だ!」 「イエライちゃんです!」 「めっちゃ可愛い子じゃんかーっ!なんかした?薄情しろ!」 「ダサい恰好の男が彼女へとグイグイいってたから、イラッときて、 焼酎の入ったグラスを浮かせてソイツの頭から背中にプッかけた!」 「えぇっ!というか、念動力とかあるんだ?カッコイイ!」 「いや、あの、交流とか深めるのは楽しいけど、それよりも、 キミキヨさんの件が先決だよ」 「あぁ、そっちはね、もう解決してるよ。半分くらいは」 「は?」 PCのあるテーブルにビール缶を置いて、真乃は 真剣な顔つきで言った。 「キミキヨさんは、手紙を出した相手が誰なのか?知ってる」
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