ワンマン!

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「というわけで。まあ、菜の花ちゃんは繊細だから、 かなりのショックを受けたよね。でもさあ、本来ならさあ、 不安がるのが一般的に考えて、普通の感情だよね?」 「はい......」 『好き』の羅列だけで怖がった菜の花ちゃんは、それが脅迫状だと 気付かされて、更に怖がってフルフルしている。 なんだかチワワみたいだ。 『守ってあげたい』とか『ごはんを奢ってあげたい』みたいな? そんな妙な魅力を彼女は兼ね備えている。 ガッツリ大人の27歳の女性だけどね。 まあまあ、年相応にみえないとか、よくあることですな。 僕だって童顔だし。 「キミキヨさんは自身の大切なライヴを妨害するという、 とてつもない手紙に動揺がまったく無い、むしろ余裕だった。 ミュージシャン歴が長いから、厄介なファンに対しては、 それなりに慣れてる。としても、違和感があった。 それはたぶん、キミキヨさんは手紙の人物を知っていて、 俺たちが、この件で動いても問題は無いってことも、わかってる。 だから俺たちに託した。そんな気がした」 「お、俺たち?」 メロンソーダのドリンクを手にしたまま、菜の花ちゃんが 聞いてきた。 「あぁ、そっか。中野っち、霊感のない相手でも、 姿が見えて会話できるとか?やれる?」 「やれるよ~っ」 と、僕は、その童顔な顔と低めの身長で出現した。 もちろん菜の花ちゃんは驚愕して、ソファーから崩れ落ちて また床にしゃがんだ。 彼女が手放したメロンソーダのグラスを、僕は念動力で 空中で受け止めて、こぼさないままテーブルの上に置いた。 「無理ーっ!もう無理っ!無理無理無理無理!」
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