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慌てて自分の教室に戻りながら、考えていたのは茶封筒の中身と、相手の男子のこと。
静は相手の男子のことを、佐野くん、と言っていた。相手は、同じ学年の佐野 傑で間違いないだろう。
白い陶器みたいな肌に黒髪がよく馴染む、他クラスの男だ。クラス、というか学年の中心的ポジションであり、なんでもそつなくこなす器用さに加えて、彼の周りには常に女性の影がつきまとう。
柏木も相当の人たらしだと思うけれど、佐野傑のそれとはすこし質が違うように感じる。柏木は女の子と楽しく遊ぶことを目的としていて、佐野傑は女の子を依存させることを目的としている、といったら通じるだろうか。まあ、ぜんぶ想像だけど。
とにかく俺は、佐野傑の胡散臭さというか、なんだか掴みどころのない雰囲気が苦手だった。
そんな人と、静がどうして。静は、佐野傑に何を渡したのだろう。
「雪くん、ごめん、待った?」
教室に戻り、考えてもわからないことに思考を費やしていると、選択教室から戻ってきた静が、何事もなかったかのように俺を迎えにきた。
さっきのこと、聞いてもいいのかな。俺たち、付き合ってないけどさ。
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