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頭がいたい。だけどそれよりも、お兄ちゃんがあたしを気にかけている事実に救われた。
おかしいよね。おかしいんだよね。だけど、一度歪んだ認知はもう元に戻らない。折れ目が入った紙を、折れ目のないまっさらな状態に戻せないのと同じだ。
「おまえのせいで、うちの人たちはみんなが迷惑してる。おまえがちゃんとしないからだよ」
腕で頭を守る。それ越しに、また殴られる。頭が弾け飛びそうな衝撃。だけどこれでも、手加減をしてくれているのだろう。
「おまえのせいで、母さんがまたヒステリー起こすんだよ。誰がアレを止めると思ってんの?」
馬乗りになって、腕を思い切り掴まれる。
「おい、おれに感謝しろよ。おれのおかけで、学校にも警察にも連絡されずに済んだんだから」
両腕をまとめ上げられ、動けなくなる。
「静ってほんと、ダメな奴だな。出来損ない」
守るものがなくなった顔を平手打ちされる。
「おれ以外、だれも静のこと必要としてないし」
空いた手で鼻と口を塞がれる。
「もう、おれにも母さんにも迷惑かけないって、約束して。無理なら、ここで殺す」
ぶんぶんと必死に首を縦に振った。お兄ちゃんに手を伸ばす。もう限界、といったところで、お兄ちゃんはあたしを解放した。
お兄ちゃんはすこしすっきりした顔をした。そして最後は、「静のこと好きだから、これ以上心配させないで」という呪いの言葉と共に、あたしを抱きしめた。
暴力とやさしさの層に絡め取られて、もうわけがわからなくなった。こんな世界にいるくらいなら、地獄のほうがマシかもしれない。
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