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言われた通りにお部屋で膝を抱えて待っていた。なんだかどっと疲れた感じがする。殴られたところがじんじんと痛む。このまま眠ってしまいたいと思ったけれど、そうしたらまた、痛い痛いになっちゃうから、がんばって起きた。
そのうち、お兄ちゃんがやってくる。いつものように、後ろ手で部屋の内鍵をかけた。
「静、久しぶりにお仕置き、しようか」
お仕置き、のことばに肩が震える。その言葉の残酷さを、身をもって実感していたからだ。
「……針? 失神? それとも、なぐる?」
「んー、今度は、身体に残るやつ」
お兄ちゃんは部屋の電気を消して、そのあと、窓を少しだけ開けた。なにをするのだろう。
「さいきんね、おれ、煙草吸ってるんだ」
「お兄ちゃんが?」
「うん。おまえ、誰にも言うなよ」
「……いわない、です」
いい子だね、とお兄ちゃんがあたしの頭を撫でた。
お兄ちゃんは窓際で、紺色のパッケージから一本、煙草を取り出した。ライターで火をつけ、口から紫煙を吐き出す。
煙草の火だけが、暗闇の中に浮かび上がっていた。お兄ちゃんが煙を吸い込むたびに、先端の火が微かに赤くなる。
「静、そこで脱いで」
「……脱ぐ? 下着も?」
「あたりまえ」
口答えをする余地はない。あたしはその場で、身につけていたものを全て剥ぎ取った。羞恥心はもうどこか遠くにいってしまった。お兄ちゃんには、恥ずかしいところなんて小学生の頃からずっと見られてる。もう、裸になるくらいじゃどうってことなかった。
お兄ちゃんは煙草をふかしながら、裸のあたしに近づいた。
何するんだろう、と不思議に思ってお兄ちゃんを見上げる。
するとお兄ちゃんは、火の点いた煙草を、あたしの右腰に思い切り押し付けた。
「……っあ! ぅ、」
「うるさい。下の階の母さんと父さんに聞こえるでしょ」
「……ぅぐ、」
「熱いね、可哀想に」
熱い、熱い熱い熱い熱い熱い、いたい、いたい、いたい、いたい、あつい、いたい。
頭の中が痛みでいっぱいになる。お兄ちゃんが思い切りあたしの口を塞いで、声を封じた。
鋭くて、あつい痛み。はじめての感覚に、涙が溢れる。我慢ならない痛みは久しぶりだった。なにこれ、いやだ、いやだ。
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