少女(有川静)

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 耐えがたい痛みに身体をばたつかせながらも離れていかない熱さに絶望感を抱いた後、気付くと、腰には赤黒い火傷の痕がひとつ、残っていた。  痛みの副産物は、暗闇でもはっきりわかるほどに色濃かった。  お兄ちゃんは火の消えた煙草を指先で愛でながら、たのしそうに笑った。 「あーあ。およめに行けないねえ、」 「あ、あ、」 「んー、仕方ないよねえ。静が、万引きなんかで捕まるんだから」  お兄ちゃんはあたしの顔を覗き込む。愛おしそうな顔をして、キスをする。唇に注がれた熱はすぐに離れた。 「およめに行けないなら、もう何してもいいよね?」 「……え?」 「おれの言うことだけ聞いてて」  お兄ちゃんばベルトに手をかけた。まさか、と思った。  今までは、触られるだけで済んでいた。恥ずかしいところを執拗に触れられて、お兄ちゃんの気が済むまでくすぐられて、延々と叩かれて。だけど、それだけだった。それ以上の、粘膜と粘膜が触れ合う行為に足を踏み入れてはいなかった。 「い、いや……!」 「嫌じゃないよ。嫌じゃない。だって、静は変態だもんね」 「だって、」 「あのさ、おれに逆らっていいと思ってんの?」  お兄ちゃんはあたしの髪の毛を鷲掴みにして思い切り引っ張った。  ブチブチと髪の毛が抜ける音がする。皮膚が剥がれそうになる痛みに身悶えして、ごめんなさい、を連呼した。  お兄ちゃんは髪の毛から手を離した。今度こそ兄は服を脱ぎ、欲望が露わになった。 「脚、ひろげて」  煙草を片手にした、血の繋がった兄に思い切り処女を引き裂かれると、何かがふつりと切れる音がした。  泣きながら謝る。兄は終始、楽しそうに新しく火をつけた煙草を右腰に押し付けてきた。  痛みが飽和して、何が何の痛みかわからなくなった。鞭打つ恐怖に己のすべてを捧げた。もう、なんでも良くなってしまった。
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