7人が本棚に入れています
本棚に追加
お兄ちゃんは、それからあたしを利用していろいろな「お小遣い稼ぎ」をするようになった。
お兄ちゃんはたまに、下着姿のあたしの写真や動画を撮って、そのデータをインターネット上の見知らぬ誰かに売っていた。たまに排泄時の姿を撮られた。マニア向けに売っているのだそう。前までは撮られることがあんなに嫌だったのに、そのうちなんとも思わなくなった。
そして毎週土曜日になると、あたしは雑居ビルの人気のない階段に連れて行かれ、知らないおじさんに下着を売った。
下着をそのまま売るのと、その場で脱いで渡すのでは、かなり売れる金額に差があるらしい。
だからお兄ちゃんは必ずあたしに「生脱ぎ」をさせた。
それに、中学1年生のあたしはおじさんたちから需要があるらしい。相場よりも高く売れるんだってお兄ちゃんが喜ぶから、なんだかあたしも嬉しい気がした。
下着を売る相手は、一見真面目そうなサラリーマンふうの男の人、ばかりだったと思う。世間体やプライドに身を隠した変態を連れてくるのがじょうずだな、と思った。
お兄ちゃんが連れてくる人の中には、新しいお客さんもいたし、何度も買いに来てくれる人、いわゆる「常連」のひともいたと思う。
どうやら、お兄ちゃんはインターネット上の掲示板を通して相手を見つけているらしかった。
あたしはスマホを買い与えられていなかったし、インターネットとかそういうのにはてんで疎かったので、お兄ちゃんが相手とのやりとりを全て仲介していたような気がする。
だから、下着1枚で1万5千円のうち、1万円は兄に持って行かれた。だが、あたしは1週間ご飯を食べられるだけのお金があればそれでじゅうぶんだった。
それに、下着を脱いで渡す以外に、触られたりだとか、写真を撮られたりだとかはしなかった。お兄ちゃんが、いい意味でも、悪い意味でも、監督者になっていたからだ。
この瞬間だけ、有川絃と有川静は、サトルとユキになり、お互いを信じて悪に手を染めた。
「毎度。いつもどーもね、田中さん」
田中、と呼ばれたその男性は、はじめてあたしが下着を売った男性だった。
彼は、常連だった。月に一度、あたしたちの前にふらりやってきては、いつも決まった値段で、あたしの下着を買う。あげた下着、なにに使うんだろう。
「……サトルくん、相談があるんだけど」
「なに?」
「ユキちゃんと、本番、してみたいんだよね」
感情をなくしたあたしは、ふたりの会話をただぼうっと聞き流していた。
最初のコメントを投稿しよう!