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柏木くんは、あたしの顔をじっと見つめていた。何かを探るような目つきだった。
「そういう目的だって、断定されるのは癪だなあ。おれはただ、有川さんと仲良くしてみたいだけ」
「そうやって誤魔化したって、むだだよ?」
「誤魔化してないって。そんなこと言って、ほんとうは有川さんがおれに近づきたかったりして」
「そういうことにしてあげてもいいよ?」
目の前にある柏木くんの手を取る。抵抗される前に、彼の手を自分の手で包み込んだ。
骨ばった人差し指に唇を這わせ、第二関節に歯を当てる。
「ちょ、っと、」
「……」
舌先でちろちろと、指先を舐めとる。柏木くんのきれいな指先を、お兄ちゃんのモノに見立てて咥えてあげた。指の腹を、ぞり、と舐め上げる。
上目遣いで彼の様子を確認すると、柏木くんは眉をひそめて、すこし悶えたような顔をしていた。
「あ、りかわさん、やばいね、それ」
「いやなの?」
「……嫌なわけ、ない」
見ると、いく直前のお兄ちゃんの表情に似ていた。蕩けていて、すこし、かなしそうな顔をしている。
柏木くんは、半分だけ人差し指を抜いて、今度は中指と人差し指の2本をあたしの口内に突っ込んだ。
指で口のなかを掻き回され、ぐちゃぐちゃと猥雑な音が鳴る。喉奥を突かれたとき、すこし苦しくて嗚咽が漏れた。柏木くんはとろんとした表情で、湿った瞳をこちらに向けていた。
この人に遊ばれてみよう、と思った。
柏木くんの指を口の中から吐き出す。唾液の糸が引いた。
「続きがしたいなら、いくらでもさせてあげるー」
「……参ったな」
「ねえ、はやくつれてって?」
ふわりふわりと地に足をつけず、求めたのは最愛の兄の面影だった。
柏木くんは、だれもいない教室で、前屈みになりながらあたしの唇に触れるだけのキスをした。
「いまからうち、おいで」
都合が良かった。あたしは、お家に帰りたくない不良少女だから。
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