少女(有川静)

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 連れて行かれたのは、柏木くんの自宅だった。  共働きらしい柏木くんの両親は家を空けていることが多いらしく、お家はあたしと彼のふたりきり。そういうことをするにはうってつけの環境だった。  柏木くんは、自室にあたしを招き入れた。柏木くんの部屋は、うちとは違って、漫画やゲーム、お菓子などの娯楽品がたくさんあってびっくりした。 「柏木くんのお家は、お金持ちなの?」 「いや? べつに、一般的な水準だと思うけど」 「そっかー」 「どうしてそう思ったの?」 「うちは、漫画とかゲームとか、なかったから」  柏木くんはベッドに腰掛けながら、あたしを隣に座らせた。あくまでも自然に距離を縮める柏木くんに、手慣れているな、と思った。 「有川さんのおうちって、家計きびしかったの?」 「ううん、たぶん、お金持ちだった」 「ならおうちの人が、そういう娯楽に厳しかったのかな」  こっち向いて、と顎を掴まれる。  ああ、この人、べつにあたしの話なんか本当はどうでもよくって、この先に待っている悦楽だけを求めているんだ。  うん、都合がいい。 「柏木くん、すきなようにしていいからね?」 「ふつうはさ、『優しくしてほしい』って言うところじゃないの?」 「あたし、オカシイのかな」 「普通ではないよね。でもおれ、そういうところ、結構気に入ったかも」  制服越しに肌が触れ合う。余裕そうな柏木くんが獣になった瞬間、貪るようなキスをされて、唾液と唾液が絡まる。  シーツに沈み、柏木くんはあまく微笑んだ。
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