抑圧の少年(塩田雪)

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「おまえ、うちのクラスの有川さんと付き合ってたりする?」  静との見せかけの交際が始まって1ヶ月ほどが経過したある日の放課後、文系クラスに所属している柏木(かしわぎ) (ひじり)が戯れにそんなことを聞いてきた。  柏木とは1年のときにクラスが同じだった。決して行動を共にするほど仲良くはなかったのだが、彼はクラスが離れてからも、たまに話しかけてくる。  柏木は人たらしだと思う。誰とでも距離を詰めることができる人種。たぶんモテると思う。あとで(せい)に聞いてみようかな。 「付き合ってる」 「そうなんだ? この間一緒に帰ってるとこ見たからさ」 「うん。柏木は静と同じクラスだったのか」 「そそ。だから有川さんのこと知ってて。もしやと思ったら、やっぱりそうだったんだねえ」  お幸せに、と言って柏木はするりと俺から離れ、元々目当てだったであろうサッカー部の友人のところに向かっていった。  静とは決して付き合っている訳じゃないのに、こうやって他人に付き合っていると言っていると、なんだか訳がわからなくなってくる。彼女が特別な存在なんじゃないかって、勘違いをしそうになるのだ。  考えても答えなんか出ないので、俺は今日も彼女を迎えに行くべく、彼女の所属する教室へと向かった。
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