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「……あ、いえ、すみません……」
直後、はっとして謝ざいをのべるわたし。……しまった、思わず大きな声を……しゅく女にあるまじきはしたなさです。反せいです。
ですが、大きな声も出るというものです。だって、前にいるこの女の人はホノカ――太一さんの口から、たびたびその名前が出ていた女の名前なのですから。
「……えっと、それで……あっ、ひょっとして君、太一先輩の妹さん? そう言えば、先輩の忘れ物を届けに来るって校長先生が言ってたし」
すると、さっきまでのポカンとした様子から一てん、ポンと手をたたき笑顔でたずねるホノカ。なるほど、校長先生から聞いていたのですね。……しかし、それにしても……太一さんをファーストネームで呼ぶとは、なれなれしいことこの上ないです。なので――
「……ええ、いちおう、とせき上は」
「……とせき? ……ああ、戸籍のこと? ふふっ、可愛いなあ妹さん」
ちょっと、何がおかしいのですか!! 漢字の読み方を知っていることがそんなにえらいのですか!! あっ、こら、頭をなでようとしないでください!! わたしは大人なのですよ!! ……まあ、それはともあれ……こせき、ですね。よし、おぼえました。
さて、茶ばんはここまでです。そのよゆうぶった顔、今すぐ絶ぼうへと変えてさしあげましょう。そういうわけで、ゆっくりと口を開いて――
「……ここだけのお話なのですが、ホノカさん。太一さんとわたしは、すでにしょう来をちかい合った仲――すなわち、ふうふの関係にあるのです」
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