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……どうしてでしょう。
「……へっ?」
まんをじしてそう言うと、目を丸くしておどろくホノカ。ええ、分かります。大いにショックだったのでしょう。
――ですが、これはまぎれもない事実。およそ一年前のある夏の日、『けっこんしようね』と言ったら、すこぶるあたたかな笑顔で『大人になったらね』と言ってくれました。まぎれもなく、わたしたちはりょう想いなのです。
そして、これはあなたのためでもあるのです、ホノカ。直めんしたくない現実でも、いつかは向き合わなければならないのです。太一さんには、すでにわたしという正さい――正しいつまがいるという現実に、いつかは向き合わなければならないのです。……ところで、正しいつまがいるなら、間違ったつまもいるのでしょうか?
ともあれ、これほどに立場の違いというものを見せつけられてしまえば、ホノカだって――
「――わぁ、可愛い奥さんだねっ。せんぱ〜い、可愛い奥さんが来てくれましたよ〜」
「……へっ?」
今度は、わたしがポカンとする番でした。なぜなら、世にもざんこくな事実を知らされたにもかかわらず、なんとホノカはわたしにすこぶるあたたかな笑顔を向けているではありませんか。……どうしてでしょう。どうして、わたしは負けた気がしているのでしょう。
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