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太一さんとわたし
「こんにちは、佐竹さん。ゆっくりしていってね」
「あっ、ありがとうございます太一さん! ……あ、その……あっ」
あるお休みの日の、お昼のころ。
二人分のジュースとおかしを乗せたトレイを持ってきてくれた後、優しい笑顔でそう言ってわたしの部屋を出ていくカッコ良い男の人を、なごり惜しそうに手を伸ばしつぶやく女の子。女の子は、佐竹友子ちゃん――同じ小学校、そして同じ二年一組のわたしの友だちです。そして、男の人は山上太一さん――およそ二年前、わたしの新しいお父さんになった人のお子さんで、位置づけとしてはわたしのお兄ちゃんになるそうです。突然、10歳も上のお兄ちゃんができるという、大変おどろくべきじたいです。
そして、太一さんに対しこのような反応を見せるのは優子ちゃんだけではありません。これまでわたしの家に遊びにきた何人もの女の子が、太一さんに対しこのような反応を見せています。太一さんは、みんなのあこがれの的なのです。
そして、われながらよろしくないと思うものの……やはり、わずかながらゆうえつ感を自かくしないわけにはいきません。なぜなら、太一さんとわたしは――
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