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「あんたに曲を授けるよ。伝説になれよ」
と唐突に黒服は俺に言った。
俺はたまたまジミーヘンドリックの悪魔の契約の話を知っていたので
「ああ、悪魔の契約ってこうなるんだ」
知らない人はいったいなにが起きたか解らなくて契約なんて結べないのではないかと余計な心配をしてしまう。
「そういう人達は山ほどいるよ。そしてぼちぼち生活してるさ」と心を見透かしてそう言った。
そうなんだ。あの話を知らないと契約できないんだ。
俺は感心しながらもたまたま知っていたラッキーに感謝した。
「あんたとの契約条件は『ライブでのアンコールをしない』にしよう」悪魔はまるで今思い付いたように言った。
アンコールをしない。
それで悪魔に曲をもらえるならとすぐ飛びつきそうになったが一応悪魔に見初められたバンドリーダーらしくいぶかしげな表情を装って
「うーん、俺達の曲を聴いてくれるお客さんに申し訳ないな」
といいつつも内心悪魔が「じゃあ辞めよっか」とどこかに消えてしまいそうでハラハラする。
「僕はもううんざり何だよ。観客にアンコール言われて出てきてもう一曲歌うくだりは」
と悪魔は不愉快そうだ。
「どうせ俺が提供した曲をアンコールで歌うんだぜ。最初からそれにしとけって言うんだ」
とイライラ感が半端ない。
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