3人が本棚に入れています
本棚に追加
魂70DWW2112FF0Wだと。俺はそんな名前じゃない。俺の名はサトシ。地元ではちょっとしたワルで、ゲーセンに行けばみんなが挨拶しにやってくる。歩く道は常に譲られ、地元の人間に俺の名前を知らない人がいないほどだ。そんな俺に何をした。全然動けない。頑丈に固められた箱はびくともしない。
くそっ。このまま海に投げ捨てられるのかもれない。まあそうなってしまったらしょうがない。自分の人生だ。この状態で何かができるわけでもない。なるようになれだ。
だんだんと頭がぼんやりしてきた。考えてみれば閉じ込められているのだ。酸素が薄れてきたのだろう。このままでは海に投げ捨てられる前に息絶えてしまう。
ぼんやりした頭ではもうなにも考えられなかった。思考回路が遮断され言葉さえ忘れてしまった。唯一動くのが手と足だ。ばたつかせるが箱はびくともしない。出せ!出せ!言葉として発することはできないが、とにかくもがいた。
急に速度が増した。滑り台が急斜面になったのか。中からはなにもわからない。もがいてもがいて言葉にならない叫びをあげた。
暗闇の中を進む先に光が見えた。小さな小さな光だ。その光が徐々に大きくなってくる。目一杯光の輪が広がりそれを通り抜けると一気に開放された。
外だ。外に出たんだ。
光の輪の中を通り抜け外に出たとき魂の底から叫び声をあげた。
最初のコメントを投稿しよう!