仏の顔も三度まで

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魂70DWW2112FF0Wだと。俺はそんな名前じゃない。俺の名はサトシ。地元ではちょっとしたワルで、ゲーセンに行けばみんなが挨拶しにやってくる。歩く道は常に譲られ、地元の人間に俺の名前を知らない人がいないほどだ。そんな俺に何をした。全然動けない。頑丈に固められた箱はびくともしない。 くそっ。このまま海に投げ捨てられるのかもれない。まあそうなってしまったらしょうがない。自分の人生だ。この状態で何かができるわけでもない。なるようになれだ。 だんだんと頭がぼんやりしてきた。考えてみれば閉じ込められているのだ。酸素が薄れてきたのだろう。このままでは海に投げ捨てられる前に息絶えてしまう。 ぼんやりした頭ではもうなにも考えられなかった。思考回路が遮断され言葉さえ忘れてしまった。唯一動くのが手と足だ。ばたつかせるが箱はびくともしない。出せ!出せ!言葉として発することはできないが、とにかくもがいた。 急に速度が増した。滑り台が急斜面になったのか。中からはなにもわからない。もがいてもがいて言葉にならない叫びをあげた。 暗闇の中を進む先に光が見えた。小さな小さな光だ。その光が徐々に大きくなってくる。目一杯光の輪が広がりそれを通り抜けると一気に開放された。 外だ。外に出たんだ。 光の輪の中を通り抜け外に出たとき魂の底から叫び声をあげた。
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