天国からの伝書鳩

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地上では7月下旬になって、月奈が通う高校では夏休みに入っていた。 すると空高くから1羽の鳩が私のもとに舞い降りてきた。 その鳩は真っ白くて、私の顔をじっと見つめていた。 鳩の足首に手紙を入れる小さな筒があって、私はここに手紙を入れることができるのだろうと思って、急いで月奈への気持ちを短い言葉で小さなメモに書いた。 そしてメモを丸めて鳩の足首の筒に入れて、 「お願い、この手紙を月奈に届けて…」 と鳩に向かって言葉をかけると、鳩が私の言葉を理解したように私の元を飛び立って、下界に向かって飛んでいった。 私はその鳩を見えなくなるまで見送った。 地上では、月奈がテニス部で練習をしていて休憩をしているようだった。 その月奈の足元に、白い鳩が舞い降りた。 月奈は驚いていたけれど、その鳩は月奈の顔をじっと見つめて何かを言いたいようだった。 そんな月奈は鳩の足首の筒を見つけたようで、その筒のふたを開けて小さく丸められた手紙を取り出した。 その手紙には、 「私が死んだのは事故だよ!  月奈のせいじゃない!  私の夢を月奈が叶えなくていいよ!  月奈は自分自身のために頑張って!」 と書かれていて、最後に『文奈』と書かれていた。 この手紙を読んだ月奈の目からは涙がこぼれ落ちていた。 そんな月奈の姿を見た白い鳩は、空高く飛び立って見えなくなった。
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