0 序曲

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 私が神に仕えて理解したこと――それは、人間に尽くすことへの無意味さと愚かさ――である。  Thaumiel(タウミエル)――それが私の名前(以降、名前はタウミエルと表記を統一する)。  嘗ては純白だった翼は堕天と同時にどす黒く染まり、今では翼の下部が少し白いだけでほとんどはカラスのように黒くなっている。  聡明な者なら、もう私の正体を察しているでしょう。そう、は堕天した天使――(すなわ)ち、地位と引き換えに【自由】を手にした堕天使。  堕天する前は【規律と道徳】を掲げ、人間を正しい方向へと導く案内人。  今は【規律と道徳】を捨て、人間を必要な者へ売買して利益を得ている商売人(因みにここで言う人間とは、地球人のことを指す)。  堕天使が商売(ビジネス)をして利益を得ているなど、傍から見ればさぞ罪深く、そして滑稽に映ることでしょう。  しかし、人間を商品として商売(ビジネス)することに羞恥心(しゅうちしん)や罪悪感は微塵も感じない。  全ては私の【夢】を叶える為の手段でしかないのだから。    
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