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ほぼ毎日、剣術の授業があった。ロイもファビオンも剣技は得意なので上級クラス、上級クラスは二年生以上しか今のところは存在しない。
レナイアは一年生ではよくできる方なので中級クラスだった。だが、正直レナイアに当たった生徒は地獄だろう。倒したい精神よりも、傷つけたくない精神が上回ってしまう。
その運の悪さがここで出てしまったファビオン。上級生が下級生を鍛える名目で、先生からレナイアとの手合わせを命じられる。
「悪いな、レナイア。お前が例えば王族でも俺は手を抜かないからな」
一見チャラチャラして見えるファビオンだが、ずいぶんと騎士らしい一面があり、ロイはそんな彼に好感をもっていた。自分が王になったときは、彼から学んだことを存分に発揮することになるだろう。
「もちろんです。本気でお願いします」
怪我を減らすため木刀を使っての稽古。
どちらも手を抜いているようには見えなかったが、剣術は圧倒的にファビオンが上だった。
「おい、それで本気か?剣術だけならロイの方が王族に見えるぞ」
いや、だから王族なんだって。
ロイは心の中で大きなため息をついた。あと一回くらい我慢したら限界がきそうな気がする。いや、今はまだ暴露する気はないが、いつか声に出してツッコミを入れてしまう自分が容易に想像できた。
そのときだった。吹っ飛ばされたレナイアが、後ろ側で練習中の学生たちと、その木刀に気がつかずぶつかりそうになる。
近くにいたロイは、飛び込んでレナイアを受け止め木刀と学生にぶち当たって床に倒れ込んだ。
「ロイ!」
ロイの周りに学生たちが群がる。
「レナイア、怪我はない?」
ロイはレナイアの下敷きになりながら、当然のように心配する。
「はい、私は全然……申し訳ありません」
レナイアの顔が青ざめているように見えた。
「気にしなくていい。君に怪我がなくてよかったよ」
ロイは心からそう思っていたが、レナイアの表情は曇るばかりだった。
「ロイ、レナイア大丈夫か?」
「ロイ、よくやった!」
「レナイアは無傷だ!」
「さすがだぞ、ロイ!」
集まった学生たちはみな、レナイアを第一王子、もしくは王族だと確信しているため、口々にロイを褒めたたえた。後に、ロイが利き腕を骨折していたことがわかったが、名誉の勲章とみなされ、さらに彼は賞賛された。
しかし、レナイアだけはいつまでも納得のいかない表情を浮かべていたのだった。
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