9人が本棚に入れています
本棚に追加
「あの、ファビオン様は話しやすいので」
「心外だな。僕の顔の方が親しみやすいだろ?」
「とんでもございません!ローアンダーでは見かけたことがないほど、ロイ様は美しいです」
レナイアは顔を真赤にして早口で答える。
美しい?はて。目が悪いのだろうか。ロイは受け流すことにした。
「お怪我をさせてしまうなど、もう生きていけないと自害も考えたのですが……」
「え、やめてやめて、そんな怖いこと言わないでよ。二度とそんなこと言わないでね?そのときは本当に怒るよ、僕でも怒ることはあるんだからね?」
「申し訳ありません」
「謝るのも禁止ね」
レナイアは目に涙をためながらロイを見つめた。
「はい……」
「留学生には気持ちよく帰ってもらいたいんだ。わざわざこの国に来てくれたんだからね」
「本当はロイ様を守れるような強い騎士になりたくて、こちらに来たんです」
「僕を守る?」
「はい。それなのに逆に怪我を負わせてしまうなんて、本当に消えてしまいたい」
「だからそんなこと言わないでって」
ロイは穏やかな口調で、レナイアを包み込むように言った。
「ロイ様が幼いころ、私の国でお会いしたことがあるんです」
「やっぱり君は王族なんだね?」
「第三王子レナイア·リノビス・ローアンダーと申します。覚えていらっしゃらないとは思うのですが、そのときも私がお怪我をさせてしまって……」
ロイはさっぱり思い出せず首を傾げた。
「お茶を……緊張して熱いお茶をかけてしまったのです」
「ああ……」
そういえばそんなことがあったようななかったような、幼いころの記憶でほとんど覚えていなかったが少しずつ思い出してきた。
「ん、あれは姫君では?」
「いえ、私です」
「あれが?天使かと思ったけど」
「私です。私が謝ると、あのときのように穏やかに、気にしなくていいとおっしゃって下さいました」
そんなことを言ったかは覚えていなかったが、レナイアを含め、ローアンダーの王族はみな見目麗しく、ロイの両親も美しかったので、自分だけ場違いのような気がしていた。
しかしレナイアは、すぐにロイに懐いて城を案内してくれたし、庭園で遊んでくれもした。急にそのことを思い出した。
最初のコメントを投稿しよう!