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「イノシシなんぞに背なんか見せたら、牙で突きさされてお仕舞だぞ?そんなことも知らないのか?」
初対面で割とキツめに叱られ、オレは泣きたくなった。叱られはしたものの、自分以外の人間に会えたことでホッとしたのだ。そしてこの訳の分からない状況からようやく抜け出せると思ったら、気が緩んでしまった。
「あの……すみません。ここって、何処ですか?オレ、道に迷ったというか、いつの間にかこんな森というか雑木林みたいなところに迷い込んでしまっていて…」
「迷い込んだ?おなごの癖に霞隠れの里に一人でやってきたのか?連れはいないのか?ここを隠里と知ってて入ったんじゃねぇのか?怪しい恰好してるし」
男は怪訝そうな顔でここを「霞隠れの里」と言った。外部の人間からは隠れるように暮らしている人々の集落だという。
「あ、あの!ちなみにオレはおなご、じゃなくて青山 駿っていいます」
「はァ?お前、おなごじゃなくて男なのか?嘘だろ?」
「嘘じゃありません。よく間違われます」
「とにかく怪しいヤツ。オレと一緒に来い!」
「はいっ!ついて行きますっ!」
オレは助けてもらったとばかりに笑顔で大きく頷くのだった。
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