第一章  邂逅

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「あの…まだですか?」  オレは腕を掴まれたまま、ひたすら歩きつづける、この山伏みたいな男に尋ねた。 「あと半時ぐらいで里に着く」  男はぶっきらぼうに答えた。それにしても…変な言い方だよな。半時ってどういう時間? 「あの……半時って?」  再び聞き返すと男は面倒くさそうに言った。 「申の刻(午後8時)には着く」  オレはますます訳が分からなくなった。“サルノコク”ってなんだよ??意味わかんねーよ。いや、待てよ。それ、前に観た時代劇のアニメで〇〇の刻って言い方していたような…。あ、そうか。この山伏のひと、きっと古風な言い回しをしてるのか。 「えっと……山伏さん、名前、なんていうんですか?」  オレはこのひとの名前を尋ねた。話をしながら移動すれば、なんとか疲れが紛れるような気がしたのだ。それにラーメンを食べ損ねたせいで今になって腹が減ってきたから。 「…山伏?オレは山伏ではない」 「は?じゃあ何なの?猟師?」
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