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「はぁぁぁぁぁ…マジでうめぇ!!」
そんな時突然、何故か変な感覚に陥った。すぐ隣で美味いとラーメンを口へと掻き込んでいる駿の声が反響して聞こえ、そして段々遠くに聞こえるようになったのだ。そう、例えるなら、プールの中で潜っていて音が聞こえづらくなるようなあの感覚。
「え?ちょ……あれ?」
辺りは急に真っ暗になった。何も見えない。さっきまで聴こえていた店内の雑音も、BGMも、店員たちの“らっしゃーい!”の掛け声も、すぐ隣に座っているはずの駿も何もかも聞こえなくなった。
「なんで!?どういうことっ!?」
オレは思わずその場を立ち上がる。すると足元に空気の渦のようなものが急に現れ、床があったあたりがグニャグニャと曲がり始めた。そうなるともう恐怖でしかない。
「た……助けてくれ!おい!おいっ!駿!駿!聞こえてねーのかよっ!!」
音も、光もない世界。オレはいきなりそんな空間に放りだされてしまったようだった。
「誰か!!誰か!助けて!!」
必死に叫んでも、それは“無”のなかではどうすることも出来なかった。自分だけが虚無の世界に引きずりこまれるような恐怖を味わい、いつしかオレは意識を手放していったのだった…。
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