第一章  邂逅

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 それにしても…この空気の美味さは異常だった。都会の喧騒に慣れ、行き交う車の排気ガスやエアコン室外機の生ぬるい空気にも身体はすっかり慣れていたせいか、いわゆるこの辺りのマイナスイオン的な空気の清々しさに後ずさりさえおぼえてしまう。  この辺りを歩いていれば、この林みたいなところから出られることが出来るのだろうか?オレはそう考え、少し歩いてみることにした。オレが倒れていたそばには、スクールバッグも落ちていたので、それを拾い上げ、あてもなく歩く。  だが、事態はそんな甘いものではなかった。行けども行けども同じ風景ばかり。獣道のようなものはなんとなくあるが、足場はかなり悪い。これは歩きまわっていると体力を消耗するだけなのではないだろうか。オレは本格的に遭難したのではないだろうか?  途方に暮れ、オレはその場で立ち尽くした。どうしたものだろうか。圏外を示すスマホを見ながら、オレは思いつく最後の手段に出た。  スマホの音量を最大にし、着信音を設定画面から鳴らし続けたのだ。辺りにこだまのようにスマホの着信音が鳴り響き、オレは誰か気付いて助けてくれることを願った。
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