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辺りの雑木林のなかでこだまするスマホの機械音は本当によく響いた。これならさすがに近くに人がいたなら気付いてくれるはず…。
しばらくして、ガサガサと枯れ葉を踏みしめて歩く音がしはじめた。オレはスマホを止め、そのまま「おーい!」と声をあげた。
「ちょ……嘘だろ…!?」
その足音の主はこちらに気付くと、物凄い勢いで突進してきたのだ。そう、
それはオレが期待していた二本足で歩く人間ではなく、“イノシシ”だったのだ。
「うわっ!うわっ!た……助けてくれーーーーーーっ!!」
今度こそ終わったと思った。イノシシなんかに体当たりされた暁には骨折なんて当然だろう。ここからさらに抜け出すことが困難になる。だがこの危機から抜け出すアイデアなど思いつくはずもなく、とにかく近くの木によじ登れるだけよじ登った。
が、その時だった。シュッ……とオレの身体のすぐ横をすり抜け、何かがイノシシの額に突き刺さり、イノシシは一瞬で絶命して倒れた。
「おい、大丈夫か?……ってぇよく見たらおなごか、お前?」
真っ黒に日焼けし、雑に頭髪を結った、山伏のような恰好をした男がオレの目の前に現れたのだった。
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