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捜査一課は人がまばらだった。同じ班の岡田がいたので「よう」と軽く挨拶し合う。そして……。
「昨夜遅くに起きた焼死事件について、何か動きはないか?」
内野が訊くと、彼は顔を顰めた。
「ああ、同じような焼死体が他にもあったな。だから事件性もあると思われたんだけど、結局事故としてとり扱われる。科学捜査研究所が原因を調べることになったらしい」
どこか納得いかないような表情をしていた。
「所轄の知り合いの話では、同様の焼死をしたのが最近3名。皆同年代で内2人は知り合いだったようだが?」
「いや、3名とも知り合いだよ」
岡田が肩を竦めながら言った。やはり宮本継夫も前の2名と同級生だったようだ。
「それでも事件性はない、と?」
「それがさ……」声を低くして顔を近づけてくる岡田。「倖田管理官が判断したらしい。何人かの刑事に事故だという方向にいくような意見を言わせてな」
倖田は捜査一課内にも所轄にも、指示に従うよう懐柔した者を複数おいていた。それぞれの部署で発言力のある連中だ。自らの望むような方向に捜査が進む事が多いのもそのためだった。
「何か裏があるんだな、倖田管理官も絡んでいるような」
目つきを鋭くした内野に、岡田は首を振る。
「俺はそこまでは言わないぞ。あくまでも状況を教えただけだ。なあ、内野……」
急に心配そうな表情になる岡田。内野は目つきだけで疑問を示した。
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