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 数日後――。  倖田睦夫は勤務を終え、帰路につくため自家用車へと乗り込んだ。  コンコン……。  どこかをノックする音がした。ウインドウだろうか?  視線を巡らせてみるが、誰も見当たらない。  気のせいか?  そう思い、前に向き直る。すると……。  「お届け物です」  遠いところから響いてくるような、男の声が聞こえた。  またキョロキョロとしてから助手席に視線を向けると、顔くらいの位置に炎が浮いている。  なんだ、これは?  慌てて外へ出ようとするが、ドアが開かない。ロックされたままになってしまっている。  馬鹿なっ!  炎を振り返る。それは次第に大きくなっていく。そして、色がオレンジから黒へと変わり……。  「うっ、うわぁぁ!」  叫び声をあげたとたん、倖田の体は黒い炎に包まれた。
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