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 静かな郊外に建つマンションだが、深夜であるというのに騒然となっていた。  いくつもの警察車両が前に停められ、警官達が行き交っている。  遠巻きに見る野次馬達――。  それをかき分け、内野(うちの)(ゆたか)は規制のために張られたロープをくぐる。  県警捜査一課に所属する刑事ではあるが、特にこの事件のために出動したわけではない。所用で近くにいて、騒ぎを聞きつけて様子を見に来た。  この地域を管轄する所轄は県警に行く前の配属先でもあり、気になったのも足を向けた理由だ。  「あれ? 内野じゃないか。どうした?」  以前の同僚、村田が目ざとく見つけて声をかけてきた。  「近くまで別件で来ていたんだが、気になってな。焼死だって?」  「ああ、それも体の奥まで真っ黒焦げになってる。なのに、他の箇所にはまったく被害がないんだ。まるで体だけ焼き尽くした火がそのまま消えてしまったみたいだよ。床や壁にも焦げ痕もないらしい」  顎で鑑識課員達が調べているのを示しながら村田が応えた。  「そいつは妙だな」眉を顰める内野。「事件性は?」
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