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奇妙な焼死の現場を見た翌日、内野は朝から県警刑事部へと出勤した。捜査一課に向かう際、倖田管理官とすれ違う。
鋭い眼光で睨まれた。
目をそらす内野。そのまま無言で離れたが、背後に憎悪に満ちた視線を感じる。
自分が清廉潔白な警察官であるなどとは、微塵も思っていない。時にルール違反や不適切な行動もとりながらの捜査をしてきた。
ただ、どんな時でも目指すのは犯罪者の検挙であり、一般市民の生活を守ることだ。それは、警察官としてあたりまえだと思っている。
しかし、奴――倖田は違う。
管理官という立場を利用して、これまで権力や財力のある者の依頼を受け、いくつかの事件捜査をねじ曲げてきた。結果、何人かの逮捕すべき者が今でものうのうとし、守られるべき人が怒りや悲しみを払拭できず、不満や不安を抱えながら生きている。
看過できずに正そうとした者もいた。内野の知り合いで、警察官として目標にできる人だった。なので、内野も協力した。
だが、不審な事故に遭い命を失った。証拠はないが、倖田が暗躍したに違いない。
許せない……。
いずれ確たる証拠を掴み、かならず追い詰める。内野はその思いを胸に秘めながら日々をすごしていた。
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