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 「倖田管理官の影響力はますます大きくなっている。反発する者には何をしてくるかわからんから、気をつけた方がいい」  「わかっているが、放置するつもりもない。あんな人間をいつまでも管理官にしておくわけにはいかない」  「いずれ監察が動くのを待つ、っていうのもありだろう?」  岡田が諭すように言うが、内野は納得しない。狡猾な倖田のことだ。尻尾を掴まれないように工作はしているだろう。それに、もし監察が動くとしても、それまでにいくつの事件がねじ曲げられてしまうかわからない。  溜息をつく岡田。その時、内野のスマホが震えた。  席を立ち廊下に出てからモニターを見ると、女性の笑顔が映っていた。  河合久恵――内野と同じ28歳だが、もっと若く見える。学生に間違われた、と自慢げに言っていたこともあった。雑誌記者をやっている。  「どうした、こんな朝から?」  「今晩時間ある?」  久恵の声。「ない」とは言わせないような口調だ。  「作ろうと思えばできるが、色っぽい用件じゃなさそうだな?」  苦笑しながら応える内野。  「じゃあ、作って。あなた次第では色っぽくもなってあげるわよ?」  ふふ、っと笑いながら言う久恵。  「なんの用件なのかだけ教えてくれ」  「たぶん警察でも苦慮しているんじゃない? 連続焼死事件のことよ」  「なにっ?」と思わず息を呑む。  「場所と時間はLINEするわ。じゃあ、よろしくね」  それだけ言うと、一方的に通話は切られた。  ずいぶんタイムリーだな……。  内野は溜息をつく。何か不穏な予感が胸にわきあがってくるのを感じた。
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