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 「イジメで自殺?」  顔を顰めながら久恵を見る内野。寂れたバー。奥の席だった。  「そう」カクテルを一口飲んでから頷く久恵。「それも、かなり酷い、犯罪といってもいいくらいの虐めだったらしいわ。最近不審な焼死をしているのは、その時の加害者達……」  彼女が記者として所属する雑誌社は、硬派な社会問題から芸能、生活情報、オカルト等多岐にわたる事項をとり扱っている。その中で、5年ほど前に他の記者が取材していた事件らしい。  本巣(もとす)(あきら)という当時高校三年生だった男子が、校舎の屋上から飛び降り自殺をした。本人の遺書や日記から、虐めが行われていたことが疑われる。  暴力や恐喝をはじめ、万引や痴漢の強要、大勢の前で裸にさせられる、異物を食べさせられる等、壮絶なものだったようだ。  虐めを行っていたのは4人の男子グループだが、昨夜の宮本とその前に焼死した2人が所属していた。そして……。  「リーダー格で虐めの首謀者でもあったのが、原北冨美男。民事党所属の代議士、原北正の息子ね。そいつがまだ焼け死んでない。これからかも?」  ふふん、と笑う久恵の顔は小悪魔のようにも見えた。  「誰かが復讐をしている、とでも? 飛躍しすぎだろう」  苦笑する内野だが、久恵は逆に真剣な目つきになる。  「本巣明の両親は学校や教育委員会をはじめ、あらゆる所に虐めの調査をするよう訴えた。でも、原北の圧力によりすべて潰された。恥ずかしながら、うちの雑誌でもそう。本社から取材にストップがかかったの。そして、母親は交通事故に遭い半身不随となって昨年亡くなった。おそらく事故は傷心で精神が虚ろだったためか、あるいは自殺をはかったのかも。その後、父親はどこかへ姿を消した」
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