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 「その父親が復讐を、って思っているのか?」  だが久恵は首を振る。  「さすがに本人にはムリ」  「ていうより、普通の人間にはムリだぞ」  昨夜の事件を思い返す内野。殺人の線を疑ってはいるが、どうすればあんな事ができるのか?  「それでね……」久恵がこちらの顔を覗き込むようにしてくる。「うちの雑誌社は扱う範囲が広いのは知ってるよね? 実は、その父親の郷里の言い伝えみたいなのに、面白い話があるの。あなたは信じるかどうかわからないけど、今、そっち系に詳しい記者に調べてもらってる。わかり次第教えてくれるわ。それが真実なら、復讐っていうのもアリね」  「どういうことだ? もったいぶらずに教えろよ」  「詳しいことがわかってから。それより、ここから先は私にも、そしてあなたにとっても重要なことなんだけど……」  「……?」  ただ見つめ返す内野に、久恵は一瞬緩んだ表情を再度引き締めた。  「原北の圧力が及んだのは警察も同じ。虐めに関する捜査をやめさせた。指示を受けて動いたのが、捜査一課管理官の倖田よ」  彼女も倖田を憎んでいた。おそらく内野以上に。なぜなら、ヤツを追求しようとして命を失った警察官は、彼女の兄だからだ。  二人は倖田の闇を暴くために協力し合うことを約束している。  なるほど、過去の虐め揉み消しに通じるから、ヘタなことをほじくり返されないように、この焼死も事件性なしとしたのか……。  納得しながらも、内野は怒りで目つきを鋭くした。
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