その言葉たちは未来で芽吹く

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 なのに、三年後の誕生日。一色は手紙を持って現れ、俺の前で堂々と内容を読み上げたのだ。 「”オレは後藤先生のことが大好きです! ダメなことをちゃんとわかりやすくしかってくれるところも、良いとこをめちゃくちゃほめてくれるところも、うれしいことは一緒になって喜んでくれるところも、オレがバカなことして落ち込んでた時にずっとそばにいてくれたところも、もう全部全部好きで、そんな先生のこと、オレがひとりじめしたくてもうムリだなって思ったから告白しました! 先生の笑うとかわいくなる顔を誰でもないオレが一番近くで見ていたいし、デートも他のいろんなことも、先生と一緒にしたいです! どうかオレの恋人になってください!!” ……どう?」  届けられた変わらぬ熱量に圧倒され、俺は唇を震わすことしかできないでいた。嘘だろ、マジか。そんな言葉ばかりが脳裏を埋め尽くす。  くらくらと目眩がするほどの激情をぶつけられてしまった。三年前、微笑ましく読んだ言葉たちに感情たっぷりの声がついたことで、相手の想いが一気に俺に襲いかかってくる。  見縊っていないつもりだったが、俺は一色のことをめちゃくちゃ見縊っていたらしい。三年も経って、この内容を恥じらうことなく読めてしまうほどの重い感情だったなんて、本気で思っていなかった。  心の奥までダイレクトに届いた一色の恋心が、鼓動の度に全身を満たしていく。 「ちゃんと会いに来て、手紙も読んだよ。オレ、まだ全然これと同じ気持ちでいるし、なんなら卒業してから全く会えてなかった分、もういろいろパンクしそうなんだけど」  ほんの少しだけ大人びた顔をするようになった一色が、左の頬にそっと右手を添えてくる。今の俺は、それを拒むことができなかった。 「好きだよ、ごっちゃん。約束どおり、オレのこと考えて?」  至近距離で花が開くように微笑む一色に、なにも返す言葉が見つからない。頬を包む温もりを感じながら、俺の脳は勝手に彼の担任だったときのことを思い浮かべていた。  あの年、教師二年目にして初めてクラスを担当することになり内心ではかなりテンパっていた俺に、一色はいつも率先して協力を申し出てくれていた。周りのクラスメイトに軽くフォローを入れながら、俺には全身で懐いてくれていたことを覚えている。人気者の生徒が教師の言い分を受け入れ中心となって動いてくれると、クラス全体がかなりまとまりやすくなる。正直、何度有り難いと感謝したことか。  それでも、担任だったときは本当にただただ可愛い弟分のような存在で、思いやりと笑顔が印象的ないち生徒でしかなかったのだ。告白されたときも、こんなに心が揺れることはなかった。  それなのに、今、久しぶりに浴びた満面の笑みに、心臓が早鐘を打ち始める。  自分の三年前の予想が全部外れ軽くパニックになっている俺を見て、一色は少しだけからかうように両目を細めてみせた。そうして、再び告げられた言葉が。 「先生、オレとイイコトする関係になってよ」
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