龍は何度もやってくる

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 マンションのドアを開ける。管理人のおじさんにも見えていないようだ。エレベーターに乗る。 「せまいなあ」  私がにらむと、窮屈そうに、とぐろを巻いた。 「うんこみたいだね」 「うるさい」  6階の5号室が私の家だ。 「おじゃまします」 「日本語上手だね」 「あたりまえだ。おれは、日本を研究して、50年になる。名前もシゲルと命名されている」 「なんじゃそりゃ」  龍の世界ってどうなってるんだ? 日本の研究? 名前がシゲル? 落ち着いて、色々話を聞きださなきゃ。 「なんのおかまいもできませんが、お茶漬けでも食べる?」 「それは、帰れという意味か?」 「よく知ってるねえ。でも、それは、京都の話でしょ。ここは関東だから、関係ないよ。お茶漬け食べるの? 食べないの?」 「いただきます」 「うめぼし、こんぶ、のり、わさび。なにがいい?」 「うめぼし」  とぐろをまいて、リビングの床にちょこんと座っている。 「お母さんはいないのか?」 「仕事に行ってるよ」  朝の残りごはんをサラダボールに入れて、うめぼしをのっけて、お湯をかけて、テーブルに置いた。 「もしかして、箸も使えるの?」 「あたりまえだ」  お父さんの箸を置いた。シゲルのからだが伸びて、前足で箸を持つ。サラサラとお茶漬けをかきこむ。 「日本人みたいだねえ。日本の何を研究してるの?」 「平和」
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