あと一回だけなんて言わない

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「なんで会っちゃうの……」 高校、大学を卒業して社会人になっても忘れられなかった哲太のこと。 高校卒業していまはもう社会人2年目だから、6年もたってんだよ。 最近は仕事もあるし、思い出すことも少なくなってやっと少し前を向けたかなって思ってたのになんで会っちゃうんだろう。 会ってしまったら簡単にまだ忘れられてないことを思い知らされてしまう。 〝大丈夫ー?〟 先輩から届いたメッセージにため息を落とす。 戻らないとダメだよね。 でも、哲太の顔を見る勇気もないしまた気持ち悪いって言われたらと考えるだけで震えが止まらなくなる。 ここまでのトラウマになっていたなんて、再会するまで知らなかったよ。 「さっきのは自分に向けてじゃないって分かってるのに……」 明らかにさっきのは先輩に向けてだったのに、自分が言われてるような気がしてならない。 また軽蔑の眼差しで見られたらと思うと怖くて仕方ない。 とりあえず戻ったら席を哲太とは遠いところに移動しよう。離れていればきっと大丈夫だと意を決してドアを開けてトイレから出る。 「……っ」 トイレから出てすぐ、壁に哲太が寄りかかっていて声にならない声が出て、息が苦しくなる。 どうしよう、もう哲太の視線はあたしを捉えてるし逃げることは許されない。
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