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「……な、こんなに?」
「ワンチャン、ブロック解除されてないかなって……既読つかなくてまだダメかぁって落ち込んでばっか」
なにやってんだろーな。って笑う哲太をみてギュッの胸が締め付けられる。
「もう避けないでくれよ、まじで辛い」ってあたしの手をぎゅっと握る。
「でも哲太あと一回だけでいいんでしょ?」
「へ?」
「あと一回だけって言った」
「そ、れは……あと一回だけ俺のこと信じてもらってまた信じて貰えなかったらその時は俺のこともう離していいって思って」
「あたしはあと一回だけなんか嫌だ」
そんなんじゃ足りないほど哲太のことが好きなんだ。
「そ、そんなの俺だってあと1回だけなんかじゃ嫌だし一生が欲しいと思ってるよ」
そのままあたしの手をひいて、自分の胸元へと引き込む。
「でもそれじゃあ、一花トラウマがどうしても拭えなかったら苦しいだけだろ……一花が苦しむのは嫌だ。好きなやつをもう苦しめたくねぇんだよ」
「……好きなやつ」
哲太の言葉に冷たくなっていた部分に熱がこもっていく気がする。
「あの時だって一花のことが好きだった」
「気持ち悪いって言ったじゃん!そのせいであたしはあれから恋も出来ずに止まったままだった!」
ボロボロと涙を流すあたしのことを「頼むから泣かないでくれよ。お前の涙を見るとどうしたらいいかわかんなくなる」ってあたしの涙をぬぐっていく。
「でも、恋もできずにいたのは俺にとっちゃ好都合だわ」
ニヤッとあのときと変わらない顔で笑う哲太をみてスっと心の中で塞がれていたなにかがあいた気がする。
哲太によって植え付けられたトラウマは哲太にしか解けない呪いのようなものなのかもしれないね。
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